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中世の万能薬といわれた伝説の「ヴァン・キュイ」を使ったスイーツや料理。

中世のフランスやスイスでは「ヴァン・キュイ Vin Cuit(煮たワイン)」という果汁を煮詰めたジャムやシロップがつくられ、栄養価が高く貴重な“万能薬”として処方されていました。有名な予言者で医師だったノストラダムスも、ジャムなどの製法をまとめた著書で記しています。

ワインの名産地で知られるヴォー州や隣接するフリブール州では、今でもそんな伝統の味が受け継がれています。地元で「レザネRaisinée」とも呼ばれるヴァン・キュイは洋梨やリンゴなどでつくられることもあるが、最も高級なのはブドウを使ったもの。ワインにできるブドウの果汁を大鍋に入れて、薪火で一晩中かきまぜながら10分の1の量になるまで丸1日かけて煮詰めていきつくられます。どろっとした濃縮エキスで通常は1度にスプーン1杯程度しか使わないので、1瓶で数年はもつほど。長年寝かせたバルサミコのような複雑なコクのある味わいはデザートのみならず、料理の調味料としても近年脚光をあびています。

そんなヴァン・キュイ(レザネ)は、バニラアイスやメレンゲ、クレープなどにソースのように添えられることがあります。また、ヴァン・キュイを使用したフィリングをつめたタルトは、甘みは強いものの爽やかな酸味があり、しつこくなく人気のお菓子。地元では、秋の収穫祭などの特別メニューとして登場します。