Intro

多くのミュージアムが集結する古都バーゼルを象徴する存在の「バーゼル美術館」。4000点の絵画、彫刻作品、30万点のデッサンやポスターなど、約7世紀に渡るコレクションはヨーロッパ屈指のレベルを誇っています。芸術がまだ王侯貴族のものだった時代、バーゼルの法律家バジリウス・アマーバッハが蒐集した美術コレクションを1661年にバーゼル市とバーゼル大学が買い取り、美術館として1671年から一般公開された、世界最古の市民による公立美術館ともいわれています。 増大していくコレクションを展示するため、何世紀もの間、何度となく改修を繰り返してきた美術館ですが、このたびさらなる展示スペースを確保するべく、2015年から本館の改修と新館の建築のため一時閉館。約1年の大規模工事を経て、4月17日についにリニューアルオープンしました。 今までの美術館の道路を挟んだ向かいの土地に、地下で本館と接続する形で建てられた新館の建築を担当したのは、チューリヒにあるスイス国立博物館の増改築プロジェクトのコンペでも優勝したバーゼルを拠点とする建築家ユニット「クリスト&ガンテンバインChrist & Gantenbein 」。ザハ・ハディッド、安藤忠雄などと競合したコンペで選ばれた案は、薄いグレーのシンプルなキューブ状のコンクリート建築。モダンでありながらも、対面にある1930年代に新古典主義建築としてつくられた本館の建物と呼応するような形で調和しています。本館の建物を手がけた建築家ルドルフ・クリストは、今回の建築家ユニットの一人であるエマニュエル・クリストEmanuel Christの大おじにあたる、地元バーゼルの建築家というのも不思議な縁です。 新しいバーゼルの見どころとしても注目されている新館は、主に企画展などの会場として利用される予定。1980年に少し離れた場所に別館としてつくられたバーゼル現代美術館と、本館、そして今回誕生した新館をあわせると展示スペースは約10000㎡となり、今まで以上に数多くの巨匠たちの名作を楽しむことができるでしょう。