アルプスの切り紙絵
牧童の暮らしを描く伝統の技
アルプスの詩情が1枚の紙で表現された精緻なアート〜 それがフランス語でデクパージュdécoupages、ドイツ語でシェーレンシュニッテScherenschnitteと呼ばれる、スイスの切り絵・切り紙細工です。黒または白い紙を小さなカッターやハサミを使ってでまるでレースのような細かい模様を描き出していきます。最近は、抽象的なものや非対称なもの、幾何学的なものなど新しいデザインもありますが、牧童の暮らしや行事など牧歌的な情景をテーマに左右対称にデザインされた伝統的なモチーフでつくられるのが主流です。
アルプスの伝統や詩情がすべて1枚の紙で表現された精緻なアート --- それがスイスの切り絵細工です。フランス語でデクパージュdécoupages、ドイツ語でシェーレンシュニッテScherenschnitte。黒または白い紙に鉛筆で下書きし、小さなカッターやハサミを使ってでまるでレースのような細かい模様を描き出していきます。最近は、抽象的なものや非対称なもの、幾何学的なものなど新しいデザインに取り組むアーティストもいますが、アルプスの牧のぼりや牧くだり、チーズづくりや木造の山小屋などアルプスの牧歌的な情景をテーマにして左右対称にデザインされた伝統的なモチーフでつくられるのが主流です。
山々に囲まれた谷間に牧草地が広がるペイダンオー地方Pays d’Enhaut。チーズの名産地で牧童たちの暮らしや伝統が息づくのどかな地域は、切り絵の里としても有名。ヨハン・ヤコブ・ハウスヴィルト Johann-Jakob Hauswirth (1809-1871) 、ルイ・ソーニー Louis Saugy (1871-1953)という、偉大な切り絵のアーティストを輩出しています。そんな、ペイダンオー地方を中心に、隣接するザーネン地方やジンメンタール(ジンメ谷)、フリブール地方などに切り絵細工が広がっていったといわれています。
紙と鉛筆、小刀とハサミ。あまり用具を必要としない切り絵細工ですが、何をおいてもできるだけ質の良いハサミを買え、といわれるほど、専用の小さなハサミが最も重要。エメンタール地方のブルグドルフにある1846年創業の刃物店「メッサー・クレッツリMesser Klötzli」は良質な切り絵専門のハサミを取り扱っており、切り絵アーティストたちから高い信頼を得ています。小刀の手入れも欠かせません。つねに研いで先端をとがった状態にしておかないと、カッティングの際に紙が裂けてしまうのです。スイスには、切り絵を教える学校はありませんが、独学またはほかのアーティストに個人的に師事し、現在ではスイス全国に約1000人の切り絵アーティストがいるといわれており、多彩な作品をつくり出しています。スイスの切り絵細工の伝統を守り、次世代に伝えていくために『スイス切り絵協会(友の会) Association suisse des Amis du découpage sur papier/Schweizerischer Verein Freunde des Scherenschnitts』が設立されました。メンバーは約550人。情熱あふれる仲間たちとの交流会や切り絵の展示会を開催したり、古今問わず質の良いさまざまな切り絵作品を蒐集し管理しています。