チーズ:グリュイエールAOP
Intro
スイス西部のグリュイエール地方でつくられる有名なチーズは、その独特の風味で世界的に人気がある美味しいチーズです。12世紀の文献に登場しているほど歴史は古く、グリュイエール村周辺の田園地帯で何世紀にもわたりつくられてきました。現在でもこの地方のチーズ工場・工房で昔ながらの伝統的な方法で製造されています。
概要・説明
ル・グリュイエールAOPのチーズは大きく、円の直径が55~65cm、重量は25~40kgです。熟成期間は5〜18ヶ月なので、熟成度合いによっても異なりますが、ハード(硬質)~セミハード(半硬質)チーズに分類されます。熟成期間は5〜9ヶ月「クラシック」と呼ばれる標準的なタイプはわずかに水分を含んでおり、柔らかく、中程度の硬さのセミハードチーズ。熟成10〜18ヶ月の「レゼルヴ」はハードチーズです。表皮は茶褐色で、中身は黄色がかった薄いベージュ色をしています。
ナッツのような香りとコク、塩味も感じられるル・グリュイエールAOPの繊細で独特の風味は、夏は新鮮な牧草、冬は干し草を食べて育った牛から採れる搾りたてで非加熱の生乳によるものです。生乳には牛たちが食べる土地の牧草の味、”テロワール”と呼ばれる土壌の特徴が生み出す味が反映されています。それに加えて、何世代も代々受け継がれてきたノウハウと、チーズ職人や熟成士の経験が加わり、芳醇で多彩な味がうまれます。
また長い熟成期間によっても味が変化していきます。グリュイエールチーズの熟成期間は長く、5ヶ月から18ヶ月です。熟成庫でのゆっくりとした熟成過程において、チーズは定期的に回転され、塩水で擦り込まれます。各チーズの底には偽造防止の「ル・グリュイエールAOP」の名称と生産地番号、製造番号と製造日月が刻印されていますが、この黒い刻印は、チーズのタンパク質であるカゼインから作られており、異物や人工物質は一切添加されていません。熟成期間を経て、脂肪分が外皮をつくり、内側を保護し、独特の芳醇な香りが生み出されます。この自然がつくりだした奇跡の味が、世界中のチーズ愛好家から高く評価されているのは、決して偶然ではありません。
チーズ1個に400リットルの牛乳
重さ35kgのチーズ1輪分を作るには、約400リットルの新鮮な生乳が必要です。この貴重な原料となる牛たちは、夏は牧草を、冬は干し草を食べて育ちます。牛の飼料に添加物を加えることは許されていません。長い熟成期間中、エピセア(欧州トウヒ)の木板の上に置かれたチーズは定期的にひっくり返され、塩水で揉み込まれます。この工程により、外皮から内側に向かって熟成が促進され、水分調整を助けチーズの風味を最大限に引き出す効果のあるエピセアの木が独特の風味と香りをチーズに与えます。AOPラベル(原産地呼称登録制度)は、さまざまな厳格な製造規格と品質管理の基準を満たしたチーズだけがル・グリュイエールAOPとして販売できることを保証します。4種類の個性あふれるグリュイエールチーズ
「ル・グリュイエールAOP」はその熟成期間や製法で4種類に分かれています。一番スタンダードなグリュイエールチーズはClassic(クラシック)と呼ばれることもありますが、とくにタイプを表すラベルはなしの場合もあります。熟成期間5〜9ヶ月間と短めのグリュイエールAOPチーズで、軽くマイルドな味が口の中いっぱいに広がります。「Réserve(レゼルヴ)」は、10ヶ月間以上熟成したもので、コクがあり、フルーティーな香りが強く、水分量が少ないので、砕けやすい食感が特徴です。「Bio(ビオ)」はBIO-SUISSE(ビオスイス:スイスの有機農法認定機関)の定める基準に従って生産される牛の生乳から製造されているもの。風味はクラシックまたはレゼルヴと同様に熟成期間によって変化します。 グリュイエールAOP登録の一部ですが、別途、詳細な基準・規格を定めてAOPを取得しているのが「グリュイエール・ダルパージュ Gruyère d’Alpage AOP」です。グリュイエール・ダルパージュAOPは、5月中旬から10月中旬にかけて、アルプAlpと呼ばれる山上の牧草地の山小屋(シャレー)で伝統的な製法で生産されます。繊細で、酸味とフルーティーさ、そして多少の塩味が感じられるこのチーズは、多様なミネラル成分を含む土壌を反映した牧草地と高山植物を食べて育った牛から搾られる最高品質の生乳によって独特の風味を醸し出しています。
どんな料理にもあう万能チーズ
「ル・グリュイエールAOP」は、そのまま食べても美味しいですが、加熱してもまた味わいがあり、どんなチーズ料理にも欠かせない万能チーズです。デザートチーズとしても、パンと合わせて食べるスナックとしても美味しく、あらゆる料理に使えます。もちろん、忘れてはならないのは「チーズ・フォンデュ」。郷土料理でもある「フォンデュ・モワティエ・モワティエ」のほか、本格的なフォンデュには必ず「ル・グリュイエールAOP」が入っているのです。
中世からの伝統と歴史
世界的に知られるグリュイエールチーズの歴史は古く、この地を治めた初代のグリュイエール伯爵によって制定された1115年の勅許状に、グリュイエール地方でのチーズ生産について言及されています。14世紀中頃から広く知られるようになり、16世紀にレマン湖からリヨンを通ってフランスへ輸出が拡大すると流通の拠点であった村の名前で、この地域の名前でもあるグリュイエールにちなんで「Gruière(グルイエール)」としてチーズの名前が記されました。このチーズは1249年からすでにフリブールで販売されていたという資料もあります。1762年には、フランスの国立学術機関「アカデミー・フランセーズ」が辞書に「グリュイエール」という語を掲載し、グリュイエール地方で生産されるチーズである旨を注記しました。
本物の証。AOPラベル
19世紀以降、グリュイエール・チーズはその世界的に有名なブランドと優れた評判ゆえに模倣品が多発したため、そのブランドと伝統を守る保護活動が積極的におこわれてきました。そして2001年7月12日にAOP登録・認定され、模倣品に対する効果的な保護が実現しました。「ル・グリュイエールAOP」は、非加熱の生乳のみから作られています。牛の飼料は、少なくとも70%が牧場で生産された牧草と干し草が用いられています。生乳はチーズ工場から最大半径20kmの範囲内の指定契約牧場からのみの供給となり、輸送時間が1時間半を超えないこと、そして搾乳してから18時間以内にチーズづくりの工程に入ること、熟成にはこの地方に生育していたエピセア(欧州トウヒ)というマツ科の木板を使うことなどなど、原料である生乳の調達から製造、熟成、出荷までのすべての工程が厳格に定められています。
AOP認定されているチーズの生産地(牛乳の生産、チーズの製造、チーズの熟成)としては、グリュイエール地方を含むフリブール州、隣接するヴォー州、ヌーシャテル州、ジュラ州、そしてベルン州の一部となります。偽造防止と製品の真正性を保証するため、各チーズの底には「ル・グリュイエールAOP」の名称と生産地番号が刻印されています。
※フランス語でAOPとはAppellation d' Origine Protegée(原産地名称保護)の略で、ワインやチーズ、ビール、ソーセージ、野菜など、その土地の伝統的な製法でつくられた特産品だけが、その土地の名前を冠したブランド(ご当地ブランド)名を表示することを保護するものです。以前は各国独自の認定制度であるAOCで定められてきましたが、EU共通の制度としてAOPに置き換わっています。
チーズ工房・工場を訪ねる
メゾン・ド・グリュイエール(チーズセンター)La Maison du Gruyère
グリュイエール城がそびえる小高い丘の麓、グリュイエール駅の前にあるチーズセンターは1969年に開館、2000年に改修・拡張されました。中世から代々受け継がれてきたグリュイエールチーズ「ル・グリュイエールAOP」の歴史や伝統を紹介する展示のほか、約7000個のチーズが熟成されている巨大な貯蔵室や大きな鍋でつくるチーズづくりなど、世界各国で愛されている有名チーズがつくられる現場を見学することができます.
▶︎メゾン・ド・グリュイエール(チーズセンター)の情報
フロマジェリ・ダルパージュ・モレゾンFromagerie d’Alpage Moléson
グリュイエール村の郊外にあるモレゾン山(標高1132m)の山麓には、1686年に建てられたという山小屋レストランで、薪で火を燃やし大きな鍋を使っておこなう昔ながらのチーズづくりを見学することができます(有料)