伝説の花ナルシスを訪ねる旅
〜モントルー・ヴヴェイ地方〜
Overview
Intro
レマン湖地方のモントルーとヴヴェイの上に位置する高地では、5月~6月初めに可憐なナルシスの花の群生に出会うことができます。真っ白な花が一面に咲き誇り、まるで雪原のように見えることから「五月の雪」と呼ばれ、古くから愛されてきました。ロッシェ・ド・ネーやモンペルランへ結ぶ鉄道やケーブルカーの沿線にある群生地にハイキングして感動の花風景を楽しんでみましょう。
日本の園芸花としてよく見かける水仙とは同属ですが別の種類の花で、学名は「ナルシスス・ポエティクス Narcissus Poeticus」。直訳すると、仏名の「ナルシス・デ・ポエット Narcisse des poètes」や独名の「ディヒター・ナルツィッセ Dichter Narzisse」と同じく“詩人のナルシス”という意味。伝説の多い花で、”ナルシスト”の語源ともなった美少年ナルキッソスの神話で知られるスイセン属の可憐な白い花です。
◉世界のセレブに愛された花
ベルエポック”といわれた19世紀末。レマン湖畔のモントルーは、多くの高級ホテルが建てられ、王侯貴族や資産家、芸術家など、世界のセレブが集うリゾートとなっていきました。そんな観光の発展とあわせて、春になると周辺の山々に群生する可憐なナルシスの花は、 地域住民だけでなく世界各国からのゲストをも魅了し、モントルーのシンボルイメージとして広がっていきました。1901年にモントルー=レザヴァン間が開通したモントルー・ベルナーオーバーラント鉄道(MOB / Chemin de fer Montreux-Oberland Bernois)のポスターにも、ナルシスの花をモチーフにしたものが数多く制作されています。
当時はナルシスの開花期である5月が1年のハイライトとされており、ホテルが大事な顧客へのプロモーションで海外へ送ったナルシスの花が17トンにも及んだというエピソードからも、熱狂ぶりがうかがえます。カナダの新聞「トロント・スター」の記者として モントルー近郊シャンビィの山荘に滞在していた作家アーネスト・ヘミングウェイも、ナルシスの花が一面に咲いている様子を、1922年5月に父親宛の手紙で綴っています。
◉モントルーのナルシス祭り
そんなナルシスブームに湧いていた1897年に「ナルシス・フェスティバル(ナルシス祭り) Fete des Narcisses」がスタート。年々規模を拡大させ、 オリジナル歌劇がつくられ、ディアギレフ率いるロシアバレエ団やパリ・オペラ座のバレエ団によって公演されるまでの 大イベントになりました。1900年には“映画の父”と称されるリュミエール兄弟がモノクロ映画「ナルシス祭り」を制作 しています。ユーロビジョン(欧州国際交換中継放送)が開局した1954年には、この種のジャンルでは初めてヨーロッパ 諸国に中継放送されたほど。その頃は花で飾られた車を中心にした大パレードが華やかに行われていましたが、交通 の問題などで継続することが困難になり、惜しまれつつも1957年に祭りは幕を閉じました。
◉ナルシス群生地をハイキング
今、再び、ブームとなっているナルシスの花。実は、近年、農業の機械化などの影響もあり群生地が急激に減少し、絶滅の危機が心配されるようになり、1999年にスイス景観保全基金が保護指定プロジェクトに認され、保護団体「ナルシス・リヴィエラ協会 Narcisses Riviera」が発足。ナルシスの群生を守り伝統の風景を取り戻すための活動や、ナルシスを訪ねるガイドウォークなど積極的におこなってきました。
可憐なナルシスの花を訪ねるハイキングはとくに花を愛する日本人に人気があり、多くの方が、レ・プレイヤードLes Pleiades、レザヴァンLes Avants、コーCauxの周辺など代表的な群生地を訪ね、ナルシスの花々との出会いを楽しんでいます。花はその年の気候状況によって異なるのが難しいところですが、北上していく日本の桜とは違い、標高が低い方から高い方へ順々に咲いていくので、宿泊地はそのままで、その年の開花状況にあわせて、 ベストスポットを探してみることができます。標高の低いポイントは4月末から5月中旬、標高の高いポイントは5月 中旬から6月初旬が見頃です。今年、ナルシスの開花予測をチェックできる待望のウェブサイトが誕生しました。日本語ページも用意されているので、旅の計画の参考にしてみてください。
地図
連絡先
Association Narcisses Riviera
Avenue Gustave-Doret 15
1800
Vevey
スイス
Phone
+41 (0)21 962 84 17
guignard@montreuxriviera.com
narcisses.ch
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