Intro

大きな角が印象的なアイベックスは、ヨーロッパアルプスの森林限界上に生息するヤギの一種。その威風堂々とした風貌から”アルプスの王”とも呼ばれる、アルプスを代表する野生動物で、森林限界から雪線までの標高約2000m〜4000m付近の険しい岩山で見かけます。

もともとスイスアルプスに数多く生息していた種でしたが、中世の頃からその角が生薬として重宝され、19世紀には乱獲によりスイスから姿を消しました。しかし絶滅から100年後の1906年に国境沿いの谷で発見された一頭から始まり、スイス国立公園を中心とした熱心な保護活動のおかげで、再びスイスにアイベックスが戻ってきました。

現在では約17000頭のアイベックスがスイスアルプスで確認されていますが、州の紋章にも描かれており、保護運動の中心地となったスイス初の国立公園が創立されたグラウビュンデン州に最も多く生息しています。

なかでも最大規模のコロニー(生息地)があるのは、ポントレジーナ近郊のピッツ・アルブリスPiz Albris(標高3166m)です。森林限界の上に雪が残る4月末から6月初旬まで、麓の谷にアイベックスたちが下りてくるため、この時期のポントレジーナは、このアルプスを代表する野生動物ウォッチングのベストポイントとして有名で、このタイミングを狙って、双眼鏡や望遠鏡、カメラを持って多くの愛好家が集っていました。

ユングフラウ地方、インターラーケンのハーダー山、ブリエンツ・ロートホルン、ピラトゥス山、ツェルマットなどの山々でもよくみられます。


DATA


学術名: Capra ibex
独語名: シュタインボック Steinbock
仏語名: ブクタン Bouquetin
分類: ウシ科ヤギ属
生息地: アルプス・森林限界より高所
サイズ: 体長 115 – 170 cm
体重: 35 – 150 kg
個体数: 約17,000頭
移動期: 6月(山上に移動)

出典: Pro Natura