スイスワインの世界
Intro
ヨーロッパの中心にあるスイスは小国にもかかわらず言語、文化、風景など実に複雑な多様性を誇っています。それは名産であるワインにもいえること。わずか九州ほどの国土で栽培されているブドウは約250種類。その比率は世界トップといわれています。そんな多彩で唯一のスイスワインの世界をご紹介します。
主なワインの産地
スイスのワイン産地は主に6つの地域に区分されています。湖のそば、山の斜面など、たくさんの日照を確保できる場所で、ヴァレー州からレマン湖を抜けてフランスへ続くローヌ河沿いの道、レマン湖から北上しヌーシャテル湖、モラ(ムルテン)湖、ビール/ビエンヌ湖に続く道、クール、チューリヒを抜けてドイツへと続くライン河沿いの道など、主なワインの産地はかつてのローマ街道と重なっています。
北西スイス地方(ドイツ語圏スイス)
チューリヒ州、シャフハウゼン州、グラウビュンデン州 、トゥールガウ州、アールガウ州など、スイス北西部にあたるドイツ語圏エリアでは生産量は少ないもののコンテストで賞を獲得するような高品質のワインがつくられています。
ティチーノ州
イタリアと国境を接するイタリア語圏。最南端に位置する温暖な気候に恵まれており、丘陵に囲まれた地形でワインづくりに適しています。この地に適応したメルロー種が8割以上を占めるメルロー王国ともいわれています。
詳細をみるヴァレー州(ヴァリス州)
全体の三分の一を占めるトップの生産量を誇るヴァレー州は、晴天率が高く乾燥した気候と土壌でワイン造りに適した地域です。アルプスの中心地で、ローヌ河が流れる谷の両側に広がる標高270m〜1100mまでの山の急斜面や麓の丘を利用してブドウ畑がつくられています。
詳細をみる代表的な品種
わずか九州ほどの国土のスイスで栽培されているブドウは約250種類で、面積に対しての比率は世界トップといわれています。毎年変動しますが、白と赤の生産量はほぼ半々。代表的な品種は白のシャスラと、赤のピノ・ノワール、ガメイ、メルローで全体の7割を占めています。
産地と生産量の割合
それぞれの産地で特徴のあるワインを生産しています。スイスで一番の生産量を誇るヴァレー州で全体の三分の一を占めています。続いてヴォー州、ドイツ語圏スイス(北西スイス)と続きます。6地域の中で一番生産量が少ないのは三湖地方です。
スイスワイン雑学メモ
年間生産量は1億4800万ボトル
2019年に生産されたスイスワインは750ミリリットルの標準ボトルで約1億4800万本です。
一人あたりの消費量は38本
世界トップクラスのワイン好き国民として知られるスイス人。 国民一人あたり1年で750mlの標準ボトルで38本のワインを飲んでいます。うち14本がスイスで生産したものになります。
輸出量わずか1.5%
世界で憧れる希少なスイスワイン。高品質を保つため葡萄の生産量が制限されているので輸出量はわずか1.5%ほど。ほとんど海外に輸出されません。また、ほとんどの品種が非常に少ない生産量で、その産地でしか流通しない銘柄が多いので、スイス旅行中は、ぜひ地元のレストランやワイナリーに立ち寄って、その土地ならではのワインとの出合いを楽しんでみましょう。
ワイン生産者は約1500人
スイス全国で、約1500人のワイン醸造者が個性的なワインをつくっています。
世界で一番小さなブドウ畑
ヴァレー州サイヨンにあるのは、わずか3本から成る総面積1,618m2の “世界一小さなブドウ畑”。『平和のブドウ園』ともいわれ、世界の著名人たちが訪れています。1999年からはダライ・ラマ法王が所有者になりました。
ヨーロッパで最も高所にあるブドウ畑
ヴァレー州フィスパーテルミネン、標高650m〜1150mのところにつくられた棚田のようなブドウ畑はヨーロッパで最高地点にあるブドウ畑といわれています。
スイス全26州で生産
ワインはスイスにある26州の全てで生産されています。
ローマ時代から続く伝統
スイスでワイン醸造の歴史は古く、ヌーシャテル湖やレマン湖畔の遺跡から大量の葡萄の種が発見され、紀元前1万年前にはすでにワインがつくられていたという説もあります。しかし現在につながるスイスワインの文化はローマ軍がアルプスを越えてきた時に発展したと考えられています。